職業被ばく

医師を中心とした医療従事者の職業被ばくの本格的低減へ -放射線障害の発生防止のために-

2021年4月1日、眼の水晶体の新等価線量限度を含む改正電離放射線障害防止規則(電離則)が施行しました。

水晶体の等価線量限度の引き下げが大幅であったことから、水晶体の被ばく低減に焦点があたっています。しかし、医師を中心とした医療従事者の職業被ばく全般についても適切に測定し線量を低減することが重要です。

図1に医療従事者の電離放射線に係る皮膚がんの労災認定事例を示しました。


図1に医療従事者の電離放射線に係る皮膚がんの労災認定事例

これは第4回医療放射線の適正管理に関する検討会の資料の一部で公開されていますので必要に応じて確認してください。

また、これまでこのサイトで報告しているようにNHKが医師本人の職業被ばく管理が不十分であるために、医師の指に皮膚に障害が生じている事例を障害が生じた医師本人の指の画像を示した上で報じています。

NHK報道の概要とポイント

  • 2021年1月11日 NHK おはよう日本
    • 医師の6割、法令で義務付けた線量計装着せず
  • 2021年1月12日 NHK おはよう日本
    • 医療従事者、過去の被ばく線量が引き継がれていないケース多数
  • 2021年6月7日 NHK おはよう日本
    • 法令で義務付けられた個数の線量計が配布されていない3%
    • 個人線量計の適正な装着の周知が0%の施設で出来ていない

そのため、この機会に医療従事者の職業被ばく低減を抜本的に行う必要があります。

特に、医師は患者の健康を守るために自分の健康を顧みない傾向があります。それ自体は医師としての責任感や使命感の表れであり称賛すべきことです。しかし、医師の働き方改革が行われてる昨今、医師の健康を守ることも重要です。

図1の事例でも示されている放射線診療は、X線透視(一次線)の中に手指を入れてしまうと手指が受ける線量はかなり大きくなってしまいます。

図2にX線透視(一次線)に手指が入るとはどういうことか、どのように透視画像で映るかの例を示しました。なお、患者の椎体や医療従事者の手指として映っているのはファントムと呼ばれる人工物で人体ではありません。一次線よりも線量が少なくなる患者からの散乱線でさえも線量を低減することが求められています。眼の水晶体はこれにあたります。したがって、X線透視の中に手指を入れないように周知していく必要があります。ただし、神経根ブロックなどの放射線診療では医師の手指をX線透視から外すことが難しい場合があります。この場合は、鉛の入った防護手袋を着用して手指の線量を低減する必要があります。
詳細は別の記事で説明いたします。

医療従事者の皮膚障害を防止するための方策

まずは、手指の線量が体幹部よりも高くなりそうな医療従事者や放射線診療を特定してください。

そして、特定された医療従事者には手指の皮膚の線量を測定するためのリングバッジを着用してください。

次に、該当する医療従事者に対する啓発(研修、教育訓練)を行ってください。X線透視の中に手指や身体の一部を入れることは原則禁止です。このことを周知徹底してください。どうしてもX線透視の中に手指を入れないと実施できない放射線診療の場合はその頻度を出来る限り少なくすることと放射線防護手袋の着用を啓発してください。

図3と4に線量測定サービス会社が作成した放射線業務従事者に配布するための報告書の例を示しました。図3の会社の例では手指に着用するリングバッジの測定例も記載されています。赤枠と青枠の箇所です。
リングバッジとは、指輪の形をした線量計です。一番高くなりそうな指に着けてください。
通常、利き手の人差し指です。


図3 皮膚(手指)の被ばく線量報告書例1


図4 皮膚(手指)の被ばく線量報告書例2

皮膚の線量限度も法令によってきめられています。等価線量で500 mSv/年です。この線量限度は2021年4月1日施行の改正電離則で改訂されておらず従前と同じです。

放射線診療に携わる医師の皆様へ

電離則は放射線業務従事者(労働者)を守るための法令です。
このことを理解して法令を守りつつ患者の命を守るということを心掛けてください。
一緒に研究をさせていただいている整形外科医の先生から整形外科の学会でも職業被ばくに関連する企画セッションが設けられていることをお聞きしています。
医師が安心して放射線診療を実施出来るようになるために、今後、医療従事者の健康を守るための職業被ばく低減や管理について情報共有をしていく予定です。

2021.07.17
福島県郡山市(故郷)より

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