職業被ばく

第80回日本放射線技術学会総会学術大会関係法令フォーラムの雑感 ―病院の職業被ばくの適正管理を進捗させるために―

第80回日本放射線技術学会総会学術大会 関係法令フォーラムの雑感
―病院の職業被ばくの適正管理を進捗させるために―

2024年4月12日(金)の午後、表記フォーラム「放射線業務従事者の登録・管理の整理と在り方について」が開催されました。本ブログ関連セッションは下記の記事で紹介しています。
第80回日本放射線技術学会総会学術大会関連セッションの紹介 – WEB放射線管理室 (radi-manage.site)

概要を紹介するとともにコメントを記します。
現在、あるいは今後、問題を抱える病院が多いことが推察されますので参考になりましたら幸いです。

総合討論で議論となった主なテーマは下記の4つです。

① 外勤する医師の被ばく線量の統合出来ないか

② 医療従事者の被ばく線量の一元化が出来ないか

③ 異動する医師の5年管理を合理的に出来ないか

④ 頻度の少ない職員等の被ばく管理は一時立入者で良いのか

それぞれのテーマ(課題)について、コメントします。

① 外勤する医師の被ばく線量の統合をどのように行うか

線量計を主たる病院のものを外勤病院に持って行き着用すると、簡便に合算出来る。しかし、どの病院でどのくらい被ばくしたか、病院ごとの最適化状況が把握しづらい。病院ごとに線量計を着用するのは、合算処理の労力が負担増になる。外勤病院の費用負担増になる。

渡邉コメント)

対策として、外勤病院では、主たる病院から配布された線量計と外勤病院で配布された線量計の2個を同時着用する方法があります。これによって、主たる勤務病院と外勤病院のそれぞれの被ばく線量を分けて評価することと合算して評価することが可能になります。外勤病院でも線量計を配布していただく必要がありますが、病院で勤務させる医師の安全確保のために線量計を配布することは必須と考えるべきです。また、着用する医師は2個ずつ着用するのが煩わしいかもしれませんが、職業被ばくを適正に管理するためですので許容していただくしかありません。眼の水晶体専用の線量計を2個着用すると見づらくなるかもしれません。その場合は主たる病院で配布された線量計だけを着用し、2個の頭頚部用の線量計の測定値の比から推察するのも一考と思います。
また、主たる病院内でも複数のエックス線診療室で放射線業務を行う医師の線量計着用問題は、本ブログで院内PHSに線量計を付けて、院内を移動する際に、必ず持ち歩くようにすることを提案しています。

② 医療従事者の被ばく線量の一元化が出来ないか

渡邉コメント)

原発労働者の職業被ばくは複数の事業所を渡り歩いても一元化できていますが、医療従事者は一元化できていません。以前より課題になっていて、日本学術会議の最近の見解「医療従事者の職業被ばくに係る放射線管理の改善に向けて」の中にも示されていますように、以前にも検討され日本学術会議から文書が出されています。しかし、費用を誰が負担するのか、という問題などから具体的な議論にまで進んではいません。今後は大きな進捗が期待できない状況であると推察しています。

日本学術会議から,見解「医療従事者の職業被ばくに係る放射線管理の 改善に向けて」が公開されました – WEB放射線管理室 (radi-manage.site)

日本学術会議・見解「医療従事者の職業被ばくに係る放射線管理の 改善に向けて」の参考文献 – WEB放射線管理室 (radi-manage.site)

③ 異動する医師などの医療従事者の5年管理を合理的に出来ないか

改正法では5年管理が求められているが、異動元から異動先へのデータの受け渡しがまだ整備されていない。個人情報保護の観点から簡単ではない。異動する従事者が積極的ではない場合もある。

渡邉コメント)

病院の職業被ばく管理が適切に行われていない原因の一つが、病院を所管する地方医療行政機関(例:保健所)により行われている医療法施行規則に基づく立入検査が適切に行われていないためです。詳細は下記の論文に記していますのでご確認ください。
地方医療行政機関から5年管理が徹底して指導されれば、病院の放射線管理担当者や医療従事者の多少の負担はありますが、当然のこととして浸透していくものと思います。

④ 頻度の少ない職員等の被ばく管理は一時立入者で良いのか

渡邉コメント)

未だに頻度が少なければ一時立入者で良いと考えている病院や放射線管理者がいることが根本的な問題です。放射線業務従事者(あるいは放射線診療従事者)の安全担保の観点から言えば、頻度が少なくても放射線業務従事者として管理するのが原則です。管理の労力と費用の問題から簡単に全ての職員を放射線業務従事者として管理出来ないことは、医用現場にいた者として理解出来ます。しかし、根本的な改善が求められていることを認識して対応すべきです。
頻度の少ない放射線業務従事者の管理方法の事例を下記の記事で紹介していますので参考にしてください。

職業被ばく管理セッションの良かった事例の紹介 – WEB放射線管理室 (radi-manage.site)

その他、合理的に管理するための方策やガイドを本ブログで提案していますので参考にしてください。

2024.04.20
群馬パース大学
渡邉 浩

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