職業被ばく

比較的線量の高い女性の放射線業務従事者の方が考えておくべきこと

2021年4月1日から水晶体の新等価線量限度を基軸とした改正電離放射線障害防止規則が施行しました。

また、病院における職業被ばくを適正に管理するために、職業被ばく線量を測定するための個人線量計の配布や着用率を高める活動が積極的に行われます。

職業被ばく線量を正しく測定することは当たり前で良いことです。しかし、一方で職業被ばく線量の数値として報告されると心配になったりするかもしれません。また、線量限度を超える可能性が出てくると部署異動や業務変更が行われる場合もあります。

このような放射線業務従事者(以下、従事者)の線量管理やケアーは病院が考えることではありますが、従事者自身も自分の安全確保や働き方を考える上で、上司や放射線管理者と相談しながら考えておくことも重要です。

なぜ、「比較的線量の高い女性の従事者」なのか、というと、妊娠可能な女性の実効線量限度は「5 mSv/3か月」となっており、線量限度を超える可能性が高くなるとともに線量限度を超えないための部署異動や業務変更が起こりやすくなるからです。また、妊娠した場合には妊娠期間中(*1)の線量限度を遵守しなければならず、そのための対策が必要になるからです。
*1:厳密には法令によって異なります。

妊娠可能な女性の実効線量限度である「5 mSv/3か月」は、年間に換算すると20 mSv/年となり、男性の職業被ばく線量限度である「100 mSv/5年かつ50 mSv/年」の前者の1年平均と同じに見えます。しかし、管理期間が3か月と短い分、実質的には厳しい線量限度になっています。放射線管理者の立場から考えるときめ細やかに管理する対象従事者になります。

ここで、

妊娠可能な放射線業務従事者(以下、従事者)と考えておくべきこと

は主に4つです。

  1. 毎月の線量を確認し正しく理解する。
  2. 線量限度を超えないようにするとともに合理的に線量を低減する。
  3. 線量限度を超えないようにするための部署異動や業務変更を想定しておく。
  4. 妊娠した場合の対応を考えておく。

 

1. 毎月の線量を確認し正しく理解する。

職業被ばくの線量は毎月報告書が配布されますので、ご自分の線量がどのくらいなのかを毎月確認してください。今回の記事は“比較的線量が高い女性の従事者”であることを前提にしていますので、報告書に記載されている線量は“M”や“X”(*2)ではなく、具体的な数値で書かれていると思います。
*2:線量測定サービス会社によって異なります。個人線量計の検出限界以下であることを意味し、被ばくしていないか、あるいはほとんど被ばくしていないことを意味しています。

実効線量の欄の数字を確認してください。前述したように妊娠可能な女性の実効線量限度は「5 mSv/3か月」ですので定められた3月間で5 mSvを超えてしまうと線量限度を超えてしまうことになってしまいます。

ここでは1か月に1 mSvを目安で考えてみることにします。1 mSv/月を超えることがある場合には線量限度を超える恐れがあるかもしれません。1 mSv/月を超えることがほとんどない場合は線量限度を超えるおそれはほとんどないと考えて良いと思います。この場合は、「3. 線量限度を超えないようにするための部署異動や業務変更を想定しておく。」の想定はあまり考えなくても良いかもしれません。

2.線量限度を超えないようにするとともに合理的に線量を低減する。

しかし、1 mSv/月を超えることがある場合には、場合によっては部署異動や業務変更の可能性を想定しておいた方が良いと思います。どちらにしても線量限度を超えないようにするとともに合理的に線量を低減する。ことが必要です。

上司や病院の放射線管理者とも相談して少しでも線量を低減する努力を行ってください。

病院は従事者の線量を低減するために努力してくれるはずです。細かいことは別の記事等を参照していただければと思いますが、線量が高くなっている原因を明らかにして改善していかなければなりません。

女性の従事者が医師の場合には以前書いた下記の記事で紹介した方法で線量を低減することが自らできます。
「医師を中心とした職業被ばくを低減するための具体的な方策Ⅰ」
「医師を中心とした職業被ばくを低減するための具体的な方策Ⅱ -防護眼鏡の使用―」

看護師の場合には医師に協力してもらうことが必要になる場合もあります。
医師も自分の線量を減らすことが周囲の他の従事者の線量を減らすことに繋がるといことを理解してください。

3. 線量限度を超えないようにするための部署異動や業務変更を想定しておく。

線量が高いままですと、看護師の場合には、病棟勤務になり3交代勤務になってしまう場合もあるかもしれません。病棟勤務が難しい場合は上司や放射線管理者と日頃から相談しておくと良いかもしれません。

かなり前には、放射線科(部)で働く看護師さんが妊娠すると病棟に異動になるのが当たり前でした。病棟の3交代勤務になると働く時間が不規則になるなど、他のリスクが高まる可能性もあります。
リスクは総合的に判断することをお勧めします。

以前、書いた原稿にアクセスあるいは入手できる場合は下記の文献を参考にしてください。
前任の病院の放射線管理者として女性の従事者の管理をどのように行ってきたかを知ることができます。

篠原邦彦、大内浩子、近本一彦、谷口和史、永井博行、森本恵理子、米澤理加、渡辺浩.放射線のリスクコミュニケーションに係る基本的事項.保健物理2009;44(4):374-379.

また、看護師が従事者として安心して働くために必要な知識や考え方を書いていますのでアクセスあるいは入手可能な方は参考にしてください。

渡邉 浩.看護師の職業被ばくの正しい理解-安心して働くために.消化器最新看護 2011;16(5):85-89.

今後の記事でも紹介していくようにいたします。

また、今回は実効線量限度を中心に紹介しましたが水晶体の等価線量限度についても同様です。

4.の妊娠した場合の対応についてはまた別の記事で紹介いたします。

2021.04.03

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