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放射線取扱主任者試験と放射線管理

令和4年度の放射線取扱主任者試験の日程が公開されています。
原子力安全技術センター (nustec.or.jp)

放射線取扱主任者には第一種と第二種がありますが、本サイトでは第一種放射線取扱主任者試験に絞ってお知らせしたいと思います。

放射線取扱主任者は、放射性同位元素等の規制に関する法律(以下、RI規制法)に規定された国家資格です。

RI規制法の対象となる病院は、ほとんどが第一種放射線取扱主任者資格対象のリニアックを設置しています。そのため、病院として需要があるのは第一種放射線取扱主任者資格です。

日程、会場、試験方法等の概要を以下に列挙しました。詳細ならびに正確には上記サイトでご確認ください。

日程:令和4年8月24日(水)、8月25日(木)
会場:

  • 札幌会場:北海商科大学
  • 東京会場:成蹊大学 千葉大学(西千葉キャンパス)
  • 大阪会場 神戸大学(鶴甲第1キャンパス)
  • 福岡会場 佐賀大学(本庄キャンパス)

【試験方法】

  • 筆記試験 【全課目択一式問題・筆記(マークシート)方式です。】

【受験資格】

  • 制限はありません。

【受験料(消費税等込み)】

  • 第1種試験:19,800円

本記事では、私の経験をもとに放射線取扱主任者の仕事や試験を受けるメリットあるいはデメリットについて記したいと思います。少しだけ職業被ばく管理の参考にもなるようにしたいと思います。

筆者は、およそ40年前になりますが、病院に就職して2年目に第一種放射線取扱主任者試験に合格しました。就職して1年目にも申込をしましたが、受験はしませんでした。なぜ、1年目と2年目に受験しようとしたかというと、就職する時の条件だったからです。1年目は嫌々でしたが、2年目はその年の5月あたりに1週間の研修を受けたため、その流れで真剣に取り組んで受験しました。

仕事をしながらでしたので大変でした。仕事が終わって帰宅してから数時間の勉強が主な勉強時間でした。記憶が定かではありませんが、土日も勉強していたと思います。私の経験から、3か月、真剣に取り組めば仕事をしながらでも合格すると思います。学生の場合も同じだと思います。3か月我慢ですね。その病院では就職条件で第一種放射線取扱主任者試験を受けることになっていましたから、私の後にも後輩たちが次々と合格しました。

本学でも毎年何人か合格者を出すようになりました。本学の学生は大学からの支援はほとんどないにも関わらず合格しています。多少はサポートしていますが、ほとんど自力で合格しています。全員受かるとは言いませんし、難しい試験ではありますが、診療放射線技師養成機関に入る学力のある方は数か月頑張れば取得できる国家資格です。

最初に就職した病院では、2年目に資格を取りましたがペーパードライバーでした。

しかし、前任の病院が開院する際に、資格を持つ診療放射線技師が必要ということでお誘いがあり、病院を変わりました。前任の病院は非密封RIを使用する研究室等、RI規制法対象のRI等がほとんどあり、フルスペックの放射線取扱主任者としての知識・技術が要求されました。また、新設であったために、頼れる先輩もおりませんでした。ペーパードライバーがいきなりレースに出るような感じでしょうか。少なくとも資格があるということと、仕事ができるということはまったく別ものです。

都内の大学病院で同じように放射線取扱主任者の仕事をしていた学校の先輩のところで学ばせていただきました。また、放射線管理会社の方々にもサポートとしていただきました。

放射線取扱主任者の資格は上述したように、RI規制法で規定された資格のため、医療法だけに規制を受ける、医療用エックス線装置(通称、レントゲン)や核医学検査は管轄外です。しかし、それらも含めて放射線管理全般を任されることになってしまいました。おそらく、他の病院でも多いかもしれません。そのため、職業被ばくを測定する個人線量計の配布基準(誰に配る)、電離放射線の健康診断の実施基準ならびに放射線業務従事者に対する教育訓練(研修)等も私が決定し、企画や講師も行う感じでした。30歳そこそこで知識、技術、経験もない時でした。

かなり、大変でしたが、今、振り返ってみると良い経験をさせていただきました。
前任の病院では医師は原則全員個人線量計を2個配布することにしました。医師全員不均等被ばく管理を前提にしました。2021年4月1日施行の改正電離放射線障害防止施行規則を起点に医療機関の職業被ばく管理が事実上厳しくなりました。厚労省の調査では、不均等被ばくなのに個人線量計を1個しか配布していない病院が全国で1/3もあります(下記の記事とサイトを参照してください)。また、本来は個人線量計を着用しなければならないと思われる医師や看護師さんが配布されていない可能性があります。そのため、そのような病院では新たに、または1個を2個にして配布しなければなりません。その分、経費も増えるため、どうしようかと悩んでいる病院の放射線管理者も多いと思います。

電離則改正の経緯と参考文献等の紹介 – WEB放射線管理室 (radi-manage.site)

【令和3年4月1日施行】改正電離放射線障害防止規則及び関連事業について (mhlw.go.jp)

000788913.pdf (mhlw.go.jp)

前任の病院に赴任したおよそ30年前に、現在の状況を予測したわけではありません。法律に基づいた放射線管理がしたいということと、頻度は少なくともX線透視下で医療行為を行う医師の被ばくは、状況次第でかなりの線量になり得るからです。開院当初だからこそ出来たことかもしれません。一度、対象を絞って配布してしまうと、配布者が増えればその分経費が増えますので、病院経営が厳しい中、簡単ではないと思います。

ちなみに、前任病院で、放射線管理区域内で放射線業務に従事することがない医師は、所属する診療科の部長医師と連名でその旨を放射線安全管理委員会に申請しないと個人線量計配布対象者(放射線業務従事者)から除外されない規定にしました。

このように、放射線業務従事者の登録、解除は、私個人が決めるのではなく、放射線安全管理委員会が決定する体制にしていました。また、途中から、労働安全衛生に関わる委員会に被ばく線量を定期的に報告するようにしました。

従事者の登録基準あるいは個人線量計の配布基準については、病院の職員(同僚)の労働安全を守るという観点で、病院全体、特に労働安全衛生を所管する委員会で考えてほしいと思います。

比較的若い時から、このような経験をしたこともあり、放射線関連法令に関する知識が身に付き、日本放射線技術学会の関係法令委員会の委員長を12年間務めさせていただきました。

委員長時代に、リニアックの放射化物管理に関する法整備に携わり、CT装置の遮蔽計算法の開発研究(*1)も行うことができました。一介の診療放射線技師ではなかなか経験できないことを経験させていただきました。

*1:Hiroshi Watanabe, et al. A new shielding calculation method for X-ray computed tomography regarding scattered radiation. Radiol Phys Technol, 10(2), 213-226, 2017.

このように、第一種放射線取扱主任者試験の受験と合格が、私の人生に大きな影響を与えたことは確かです。

受験を躊躇している方も多いと思いますが、受験を考えている皆さんの参考になりましたら幸いです。

最後に、診療放射線技師養成機関の学生の皆さんへ、現実的なメリットとデメリットを少し述べて終わりにしたいと思います。

学生が受けるメリット

1. 診療放射線技師試験にも役立つ

第一種放射線取扱主任者試験の科目は診療放射線技師の資格内容とかなりかぶっていますので絶対に役立ちます。

2.診療放射線技師国家試験対策の予行演習になる

現在の診療放射線技師の国家試験は易しいとはとても言えません。時間をかけて戦略的に勉強する必要があります。その予行演習として、第一種放射線取扱主任者試験は最適です。どのような勉強法が自分に合っているか、スケジュールをどのように立てるかを考えて実行してください。試験科目との過去問を解析して傾向を洗い出して対策を行うことも多いと思います。その予行演習になります。これらの経験が診療放射線技師試験に役立ちます。

3.一発勝負の試験の経験になる

診療放射線技師の国家試験は1年に1回だけです。卒業時の2月にあるだけです。卒業時に不合格になると、その後の合格率はかなり下がります。言い過ぎとは思いますが、一発で受からないと、その後は受かりません。都会の見知らぬ会場のアウエーの中で受験します。試験前のホテルの前泊や試験の準備等、経験しておいた方が良いことは多いです。一発勝負だからこそ、その前に第一種放射線取扱主任者試験の受験で経験しておくことをお勧めします。

4.就職活動のアイテムになる

病院によっては、第一種放射線取扱主任者資格を有していることが有利になる場合があります。前任の病院でもしばらく資格を有する者が私しかいなかったために、資格を有する学生を優遇したり、職員の受験を推奨したりしていました。

 

学生が受けるデメリット(配慮すべきこと)

1.学校での勉強との両立ができるか

診療放射線技師の国家試験が厳しいこともあって、学校での勉強もかなり厳しくなっていると思います。学校の定期試験が前期と後期の2期制になっている場合は、第一種放射線取扱主任者試験の前に前期の定期試験があると思います。受験科目の内容はかなり重複していると思いますが、両立を図ることができるかが課題です。

2.費用がかかる

受験料は今年度は約2万円です。前年度から値上げされたようです。遠方からの受験の場合は前泊や1日目と2日前の間の宿泊で合計2泊する場合もあると思います。交通費もかかります。これらの経費負担が簡単ではない学生もいると思います。

 

以上、令和4年度の第一種放射線取扱主任者試験をお知らせするとともに、私の放射線取扱主任者等の経験談を紹介させていただきました。受験することを悩んでいる方々の参考になりましたら幸いです。

2022.06.05

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