職業被ばく

防護眼鏡と水晶体専用個人線量計の着用基準を考える

2021年4月1日,改正電離放射線障害防止規則が施行され,水晶体の等価線量限度が「150 mSv/年」から「定められた5年間に100 mSvなおかつ50 mSv/年」に改正されました.詳細は記事,電離則改正の経緯と参考文献等の紹介 – WEB放射線管理室 (radi-manage.site)でご確認ください.

年平均で考えると1/7以下と大幅な引き下げです.経過措置として,2021~22年度までは年間50mSv,その後の3年間は60 mSvとすることが,条件を満たせば認められています.

白内障のしきい値

改正法は既に施行されており,年間50 mSvの線量限度を担保した上で,経過措置後を踏まえて年平均20 mSv以下となるようにすることが求められています.
さらに,放射線業務従事者(以下,従事者)の健康管理として,眼の白内障の発症防止のためには,線量限度を遵守すれば良いわけではありません.白内障のしきい値は新たに0.5 Gyとされたのですが,50年間放射線業務に従事し線量限度いっぱいで被ばくしたとすると,50年間では1 Gyとなってしまい白内障のしきい値を超えてしまいます.つまり,線量限度を担保するのは最低限の管理であり,さらに線量を低減することが求められているのです.
なお,従事者の主な対象者は医師です.

防護眼鏡と水晶体専用個人線量計の着用基準

そこで,課題となるのが,水晶体線量を低減するための防護眼鏡や水晶体専用の個人線量計の着用基準です.着用基準とは,いつから,あるいはどのくらいの線量になったら着用するか,ということです.

日本保健物理学会の「眼の水晶体の線量モニタリングのガイドライン」(suishotai-guideline.pdf (jhps.or.jp))では,例題として示した中で,「個人線量計の不確かさを考慮して,使用している個人線量計が年間13 mSv(=20/1.5)を超える可能性がある場合,眼の近傍に水晶体に水晶体専用の個人線量計を装着するという考え方もあります.」とガイドラインと言うほど強いものではないと思われますが,一つの基準例として“13 mSv”を示しています.

しかし,この13 mSvとう基準例は個人線量計の不確かさを考慮したものであるので,年平均20 mSvまで余裕があるとは限らないことに注意が必要です.また,上述したように,線量限度いっぱいでは白内障の発症を防止できない可能性があります.

したがって,各病院が職員である従事者の健康管理の観点から,水晶体専用の個人線量計の着用基準を考える必要があると考えています.

そして,その前に,水晶体の線量を低減するための防護眼鏡の着用を病院が着用基準を定めて促すのか,あるいは従事者個人の判断に任せるのかという課題があります.線量限度を遵守することと職員の健康管理を考慮する上で,病院として防護眼鏡の着用基準を定めることは必須と考えられます.その上で,従事者個人が病院が定めた着用基準未満であっても着用できる環境を整備するのが良いのではないでしょうか.環境とは,防護眼鏡を配備することがその一つです.

防護眼鏡を着用すると,水晶体の線量は低減されます.低減された線量を測定しないと水晶体の等価線量限度を遵守しているかどうかや実際の線量を確認できないことになります.そのために,水晶体専用の個人線量計を着用することになります.

防護眼鏡を着用していない場合は,頭頚部に着用している個人線量計の測定値から等価線量(3 mm線量当量)を求めて,それを水晶体の等価線量としています.防護眼鏡を着用した場合は,頭頚部よりも水晶体の被ばく線量は低くなっていると考えられます.頭頚部に着用した個人線量計で測定した等価線量が線量限度を遵守できている場合は,防護眼鏡を着用していても水晶体専用の個人線量計を着用しなくても良いという考えもあります.これは,病院と従事者の間で十分コミュニケーションをとって決めた方が良いと思います.なぜなら,水晶体が被ばくした本当の線量を測定,記録し,従事者に伝えなくて良いのか,というのが第一です.ただし,個人線量計を着用することに従事者が違和感を覚えて作業しづらいということもあるかもしれません.

今回の記事はここまでにしたいと思います.
これから,この課題を考えなくてならない病院が増えると思いますので定期的に関連記事を掲載したいと考えています.

2021.12.18

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  1. […] 2021年12月18日に掲載した記事「防護眼鏡と水晶体専用個人線量計の着用基準を考える」において,下記のように,日本保健物理学会のガイドライン1)の中で,“13 mSv”が示されていることを紹介しました. しかし,この“13 mSv”は測定の不確かさを考慮したものとなっています. なお,本記事では放射線業務従事者(病院では主に医療従事者を従事者と略して記しています.) […]

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