職業被ばく

職業被ばくの年間線量を予測する上での注意点

職業被ばくの年間線量を予測する上での注意点

2021年10月2日に掲載した記事「職業被ばく(特に水晶体)の適正管理に向けた年度中間確認」で年間の線量を予測して対策を講じることを推奨しました。

病院での医療従事者、特に医師の年間線量を予測する上でいくつの注意点があります。

この注意点を考慮して予測しないと誤った線量予測となります。

さらに、誤った線量を基に対策を講じることは対策自体も誤ってしまうことになります。

病院での職業被ばくの年間予測上の注意点は、まさに医療における職業被ばく管理の課題そのものでもあります。

以下に列挙して解説します。少し詳しい解説になってしまいますがご容赦ください。個人線量計を着用したことがない方には分かりづらいかもしれません。また、不均等被ばくと実効線量の計算方法がある程度理解できていることが前提です。

1 不均等被ばくを考慮した個人線量計の配布であるかどうか

厚生労働省の調査結果によれば、全国の1/3の病院で不均等被ばくを考慮して個人線量計が配布されていません(図1)。病院の職業被ばくで線量が高くなるのは主にX線透視を用いたIVRをX線診療室内で行う医師です。放射線防護衣(プロテクター)を着用して従事しますので、胸腹部と頭頚部では不均等被ばくになります(図2、3)。詳細は別の記事をご覧ください。

不均等被ばくの場合、胸腹部と頭頚部のそれぞれに個人線量計を着用しなければなりませんが、1/3の病院は1個しか配布してないということです。

1個を胸腹部に着用するのか、それとも頭頚部に着用するのかによって測定された線量は異なります。胸腹部用を放射線防護衣の内側に着用するのか外側に着用するのかによっても異なります。

ここでは、線量限度として実効線量と眼の水晶体の等価線量に焦点をあてて解説したいと思います。

実効線量の計算式は、記事「実効線量の計算方法から理解する個人線量計の正しい着用方法 – WEB放射線管理室 (radi-manage.site)」で解説しています。おおまかに言うと、頭頚部や放射線防護衣の外側と、放射線防護衣の内側では10:1になります。1個の個人線量計で不均等被ばく管理をしたことがないため、実際にどのように実効線量を算定しているのか分かりません。しかし、方法は2つしかありません。測定値をそのまま使って実効線量とする方法と測定位置(頭頚部や放射線防護衣の外側か、放射線防護衣の内側)を考慮して算定するかです。おそらく、測定値をそのまま使って実効線量としているのだと思います。この場合、個人線量計が頭頚部や放射線防護衣の外側と、放射線防護衣の内側では、実際に2個の個人線量計を着用した場合の実効線量の予測が大きく変わってきます。

① 測定値をそのまま使って実効線量とし、個人線量計を頭頚部や放射線防護衣の外側に着用している場合

この場合は、実際の実効線量はおおまかに1/10になります。線量が減る方向なので特に問題にはならないと思いますのでこれ以上の解説は省略します。

② 測定値をそのまま使って実効線量とし、放射線防護衣の内側に着用している場合

この場合は、①の場合と逆に、実際の実効線量はおおまかに10倍になります。線量の差がかなりありますので放射線業務従事者個々に確認が必要です。

③ 眼の水晶体の等価線量(以下、等価線量)を予測する場合

  • 測定値をそのまま使ってと等価線量し、個人線量計を頭頚部や放射線防護衣の外側に着用している場合

この場合は、測定された等価線量が算定した等価線量になります。つまり、同じということです。

  • 測定値をそのまま使って等価線量とし、放射線防護衣の内側に着用している場合

この場合は、等価線量は過小評価していますので、放射線防護衣による線量低減率の補正を行う必要があります。補正係数は放射線防護衣の鉛当量や被ばくするシチュエーションなどによって異なってきます。2個の個人線量計を使って不均等被ばくを測定した例があれば、2つの線量差(比)がある程度参考になると思います。

2 不適切な着用の確認

2個の個人線量計を着用している場合でも注意が必要です。放射線防護衣の外側や内側に2個とも着用してしまう場合があります。あるいは胸腹部用と頭頚部用を逆に着用してしまう場合もあります。測定値を見ればある程度その確認ができます。詳細は「測定値から個人線量計の不適切な着用方法の見分ける方法 – WEB放射線管理室 (radi-manage.site)」を参照してください。この場合は正しく着用した実際の線量として修正する必要があります。

3 眼の水晶体専用の個人線量計を着用していない場合

眼の水晶体専用の個人線量計を着用していない場合は、頭頚部に着用した個人線量計の測定値から算定しているはずです。眼の水晶体専用の個人線量計を着用していないということは、眼の水晶体の等価線量がそれほど高くない状況であると推察します。ただし、半年が経過した時点で高くなっている場合は眼の水晶体の等価線量を過小評価しないように予測する必要があります。では、どこから高いと判断するかや防護眼鏡や水晶体専用の個人線量計の着用基準については細かい議論が必要なため次回以降の記事で解説します。

4 複数のX線診療室などで被ばくする場合

医師は必ずしも一つのX線診療室だけで放射線診療を行って被ばくしているわけではありません。消化器内科医は、ERCP検査を行う内視鏡室や胃や大腸の透視検査を行うX線透視室などで日常的に放射線診療を行うことが多いです。消化器外科医や整形外科医の一部は、放射線部門のX線透視室と手術室で放射線診療を行います。これら複数のX線診療室などでの被ばくを合計する必要があります。病院で配布する個人線量計は別々に配布しませんので1組の個人線量計をその都度持参して着用しなければなりません。もし、手術室での測定ができていない場合はその分を推定して合算する必要があります。

5 個人線量計を100%着用しているかどうか

医師の個人線量計の着用率が100%ではないことが明らかになっています。医師の着用率を100%にすることは簡単ではありません。そのため、個人線量計の着用率をできるだけ正確に確認してください。着用率が50%であれば、実際の線量は測定値の2倍になります。

この場合、前述した2.のように複数のX線診療室などで被ばくする場合は個々のX線診療室ごとに評価して補正する必要があります。

6 主に勤務する病院以外の病院で放射線診療を実施している場合

医師は地域の医療を支えるためなどで、週に1日、他の病院で勤務することがあります。この時に、放射線診療を実施して被ばくしている場合はその線量も合算しなければなりません。着用率などの補正は上述と同じです。ただし、個人線量計をまったく着用していない場合の補正は難しいです。主に勤務する病院と同じ放射線診療を実施していたとしても、使用するX線装置の種類や機能などによって被ばく線量は大きく異なる可能性があります。

以上の注意点を考慮して年間の被ばく線量を予測してください。そして、その予測線量に基づいて対策を講じてください。

かなり細かい解説になりましたが、適切に職業被ばく線量が測定されていれば上述の考慮はほとんど必要ありません。そのため、不均等被ばくを正しく測定し、着用率を100%とし、病院内ならびに病院外でも正しく測定、合算してください。

2021.10.17

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