医療被ばく

診療放射線技師の国家試験問題から医療被ばくと職業被ばくの適正管理を考えるNo.1 IVRにおける患者皮膚線量の低減法を学ぶ(職業被ばくも)

診療放射線技師国家試験の問題から「IVRにおける患者皮膚線量の低減法」を学びます。

2021年2月に実施された第73回診療放射線技師国家試験で下記の問題が出題されています。
この問題の解答も公開されています。
第73回診療放射線技師国家試験問題および正答について|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

この問題から医療被ばくの低減法を学んでみたいと思います。

第73回診療放射線技師国家試験問題 午前

【ダイジェスト版】循環器診療における放射線被ばくに関するガイドライン(2011年改訂版)(以下、循環器放射線被ばくガイドライン2011)に患者皮膚線量の低減法が示されていますので、この循環器放射線被ばくガイドライン2011に沿って学んでいきます。

JCS2011_nagai_rad_d.pdf (j-circ.or.jp)

循環器放射線被ばくガイドライン2011の図9Aと9Bに拡大透視を用いた場合の患者線量の違いとして、FPDサイズ7.5インチに比べ4.5インチでは患者線量は1.3倍になることが示されています。したがって、回答肢1.は誤りになります。患者線量を低減するためにはできるだけ拡大透視を用いないことが有効ということになります。なお、術者の被ばくは線量は4.5インチの方が0.7倍になることが示されており、術者の被ばく低減には有効ということになります。

循環器放射線被ばくガイドライン2011の図15に患者皮膚線量を低減する方法の例として、X線入射方向を40°変えるとX線入射皮膚面の重複がなくなることが示されています。X線入射皮膚面の重複がなくなるということは皮膚線量が分散されることを意味し皮膚障害が起こりにくくなります。したがって、回答肢2.は誤りになります。

循環器放射線被ばくガイドライン2011の図8にX線管焦点と患者の皮膚(焦点皮膚)間距離を10 cm余計に離した場合の患者線量の違いとして、10 cm離した方が離していない時よりも患者の線量0.87倍になることが示されています。したがって、回答肢3.は誤りになります。患者線量を低減するためには焦点皮膚間距離をできるだけ長くすることが有効ということになります。

循環器放射線被ばくガイドライン2011の図7に検出器と患者の皮膚(検出器皮膚)間距離を密着した時と10 cm話した時の患者の線量の違いとして、密着した時よりも10 cm離した時の方が患者線量が1.15倍高くなることが示されています。つまり、患者皮膚間距離を長くすると患者線量は高くなってしまいます。したがって、回答肢4.は誤りになります。患者線量を低減するためには検出器皮膚間距離をできるだけ短くすることが有効ということになります。ちなみに術者の職業被ばく線量は変わらないことが示されています。

循環器放射線被ばくガイドライン2011の図5Aに透視のパルスレートと被ばく線量の関係として、パルスレートを30 p/sから15 p/s、7.5 p/sと下げるにしたがって患者の被ばく線量が下がることが示されています。透視のパルスレートを下げることはIVRにおける患者の皮膚線量や臓器・組織線量を下げる基本かつ重要な方法です。したがって、回答肢5.の「透視パルスレートを低くする」は正解です。撮影時の撮影フレームを下げると透視のパルスレートと同様に低減することが図5Bに示されています。さらに、術者の線量も患者線量と同様に低下します。つまり、透視のパルスレートを下げることは医療被ばくと職業被ばくの両方に効果のある方法です。

循環器放射線被ばくガイドライン2011では表2に(患者の)被ばく低減の原則として、
・不必要な透視、撮影をしない
・付加フィルタを使用する
など、その他の方法も図と被ばく線量の比も示されていてとても分かりやすいですので是非参考にしてください。

なお、循環器放射線被ばくガイドライン2011は「2021年 改訂版 循環器診療における放射線被ばくに関するガイドライン」に改訂されています。

https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2021/03/JCS2021_Kozuma.pdf

2021.06.05

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