職業被ばく

実効線量の計算方法から理解する個人線量計の正しい着用方法

2021年5月1日に掲載した記事で個人報告書に記載された職業被ばく線量の見方を紹介しました。なお、法令で放射線業務従事者(以下、従事者)に個人報告書を配布することが法令で義務付けられています。

今回は、個人線量計の正しい着用が必要なことを理解してもらうために、まず個人報告書に記載された測定値から実効線量の計算方法を紹介し、次に個人線量計の正しい着用することが必要なことを紹介したいと思います。

X線透視室に放射線防護衣を着用して放射線業務を行うと基本的には不均等被ばくになります(図1)。放射線防護衣で防護された胸部や腹部と防護されていない頭頚部の被ばく線量が異なるということです。そのため、法令で不均等被ばくの場合には頭頚部(男女両方)と胸腹部(男性は胸部、(妊娠可能な)女性は腹部)に個人線量計を着用することが義務付けられています。

ご協力いただいた線量測定サービス会社の個人報告書で解説します。この2つの個人線量計の測定結果が測定値です。それぞれの会社の個人報告書(図2と図3)の青枠の箇所に測定値が記載されています。H1cmは1 cm線量当量、H70 µmは70 µm線量当量を意味しています。

図2 個人報告書:千代田テクノル

図3 個人報告書:長瀬ランダウア

実効線量は1 cm線量当量を用いて算定します。

不均等被ばくになる場合の実効線量の算定式を以下に示します。

実効線量=0.08Ha+0.44Hb+0.45Hc+0.03Hm…式(1)

ここで、Ha・Hb・Hc・Hmは下記のとおりです。

Ha: 頭部および頸部に装着した測定器の1cm線量当量
Hb: 胸部および上腕部に装着した測定器の1cm線量当量
Hc: 腹部および大腿部に装着した測定器の1cm線量当量
Hm: Ha・Hb・Hcのうちの最大の1cm線量当量

実効線量の算定値が図2と図3の赤枠に記されています。

実効線量の計算方法の解説

男性が放射線防護衣を着け、頭頸部に1個と放射線防護衣の内側の胸部に1個、合計2個装着した場合について考えます。

男性の場合はHcの測定値がないため、 Hc=Hb…式(2)とします。

また、放射線防護衣の内側に着用した胸部の個人線量計の測定値よりも頭頚部用の方が高くなりますので、Hm=Ha…式(3)となります。

式(1)に式(2)と式(3)を代入すると、

次式になります。

実効線量=0.11Ha + 0.89Hb…式(4)

つまり、おおまかには全身の被ばく線量の指標である実効線量は、不均等被ばくの場合、頭頚部10%、放射線防護衣の内側の胸部に着用した個人線量計の測定値が90%で算定されます。胸部の線量が大きく反映されることになります。

(妊娠可能な)女性の場合は式(4)のHbがHc(腹部)に変わりますので放射線防護衣の内側の腹部に着用した線量が大きく反映されます。

なぜ正しく個人線量計を正しく着用しなければならないのか

この算定方法を理解しておくと、着用位置が正しくないと実効線量も正しく算定されないことが理解できます。

例えば、頭頚部用と胸腹部用の個人線量計の両方を放射線防護衣の中に着用してしまうと頭頚部用の線量が低くなりますので、計算上の実効線量が低くなってしまい過小評価します。

ちなみに、眼の水晶体の等価線量は専用の個人線量計を着用しない場合、頭頚部用の個人線量計の測定値を用いますので、水晶体の等価線量も過小評価してしまうことになります。

逆に、頭頚部用と胸腹部用の個人線量計の両方を放射線防護衣の外側に着用してしまうと胸腹部用の測定値が大きくなるため、計算上の実効線量が高くなり過大評価します。

従事者の方は、職業被ばく線量を正しく算定するために正しく個人線量計を着用してください。

一方、放射線管理者の方は従事者に正しく個人線量計を着用してもらえるように研修(教育訓練)を行う必要があります。

2021.05.08

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  1. […] 先週「実効線量の計算方法から理解する個人線量計の正しい着用方法」、先々週「職業被ばく線量に関する個人報告書の見方」、法令で義務付けられている職業被ばくの個人報告書について解説をおこないました。 […]

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