医療被ばく

医療被ばくと職業被ばくの適正管理のための改正法要求事項と地方医療行政機関の判断の構図

今回は、医療被ばくと職業被ばくの適正管理のための改正法要求事項と地方医療行政機関の判断の構図について解説します

まず、医療法に基づく病院への立入検査について解説します。

医療法では下記のように第25条第1項で病院等への立入検査を行うことを定めています。

第二十五条 都道府県知事、保健所を設置する市の市長又は特別区の区長は、必要があると認めるときは、病院、診療所若しくは助産所の開設者若しくは管理者に対し、必要な報告を命じ、又は当該職員に、病院、診療所若しくは助産所に立ち入り、その有する人員若しくは清潔保持の状況、構造設備若しくは診療録、助産録、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。

そして、この立入検査は保健所等の地方医療行政機関が行っています。

東京都では毎年立入検査の結果をホームページに掲載し透明性を高めています。
病院立入検査結果 東京都福祉保健局 (tokyo.lg.jp)

医療被ばくの適正管理を求める改正医療法施行規則(以下、改正法)は2020年4月1日に施行しています。改正法が求めている内容には、医療被ばく線量の管理や記録等があります。

改正法が求めている内容が適切に実施されているかどうかは、医療法に基づく立入検査で主に確認されます。そして、地方医療行政機関の担当者が適切かどうかを判断します(最終的には地方医療行政機関としての判断になります)。適切でなければ行政指導が行われ病院は改善しなければなりません。

したがって、改正法の要求事項は地方医療行政機関によって多少の差が出ることがあります。これは地方自治事務になっているためです。放射線診療の分野でも、地域によって行政指導内容が若干異なることがあります。極端な場合、A市ではOKとされたことがB市では改善が要求されるということも起こります。
参考文献:渡邉浩.医療における医療被ばくと職業被ばくの課題について.保健物理,54 (1),74~76 2019(Accessed 2020.6.1)

図1にこの構図を示しました。病院として医療法を中心とした法令を遵守して活動を行う場合、この構図を理解しておく必要があります。

改正法が要求する医療被ばくの適正管理は、これまであまり明確ではなかった医療被ばくに関する本格的にメスを入れるものです。また、改正内容は大幅で多くの知識が必要とされます。改正法を理解し適切に確認、指導しなけれならないのは地方医療行政機関の担当者も同じです。

しかし、放射線診療部門を担当する地方医療行政機関の担当者の中には診療放射線技師ではない職種の方がおります。また、診療放射線技師資格を有していても診療放射線技師の養成機関を卒業した後にすぐに地方医療行政機関に就職された方もおります。つまり、放射線診療の専門的な知識が少ない方もいるといことになります。

職業被ばくの話になりますが、厚生労働省による2020年度の調査結果からもその状況が伺えます。

電離健診対象医療機関に対する自主点検
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/anzen/0000186714_00003.html

病院で働く方の職業被ばく管理において、不均等被ばくにおける放射線測定器(個人線量計)の配布状況では、本来2個配布しなければならない放射線業務従事者に対して1個しか配布していない病院が33.3%もあったと報告されています(図2)。

この調査でも1個しか配布していない病院に対して改善を求めており、法令違反になっている可能性があります。

職業被ばく管理において不均等被ばくの管理は基本事項です。この管理が不適切である状況を立入検査において確認して行政指導できていないことは地方医療行政機関の担当者の知識が追いついていないことを示しています。

放射線診療に関することだけを担当しているとも限らず他の分野のことも担当していることが多いようです。最近の新型コロナウイルスの感染拡大に伴って地方医療行政機関の作業量が増大している現状では特に大変な状況ではないかと推察しています。

このような現状で、抜本的な医療被ばくの適正管理を求めた改正法を理解し、立入検査を行うことは難しい状況と推察しています。

そのため、私が関わった学会の事業では、医療機関と地方医療行政機関の両方に役立つガイドを作成、公開しています(図3)。

われわれが作成したチェックシートは、改正法で義務付けられた項目ごとに、医療機関の整備・進捗・達成の確認用として利用できます。また、行政機関の支援として互いに共有し合えることを視野に入れて作成しています。さらに、チェック項目がどの通知あるいはガイドラインで求めているかも分かるようにしています。

特に、医療被ばくの適正管理では、診断参考レベル(DRL)はあくまで参考値であって線量限度ではないということを理解する必要があります。

是非、医療機関(病院)や地方医療行政機関の担当者の方に役立てていただきたいと考えています。

立入検査においては病院の担当者と地方医療行政機関の担当者が積極的に意見交換を行ってください。そして、病院が医療被ばくを適切に管理するための方策の策定に繋げることを期待しています。

また、図1に示した構図は職業被ばくの管理においても同様です。

立入検査で指摘されるか否かに関わらず病院の職業被ばくの管理者は放射線業務従事者の職業被ばく低減に努めていただきたいと思います。

2021.09.25

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