2020年4月1日、医療被ばくの適正管理を求めた改正医療法施行規則(以下、改正省令)が施行しました。これから本格的に勉強を始める方々のために、また、既に対応している方々の復習になるように、今回の改正省令の概要と対応についてできるだけ分かりやすく解説したいと思います。参考文献はインターネット上から入手できるものに限定しましたので是非確認してください。なお、参考文献のアドレス情報は以前の記事「医療被ばくの適正管理に関連する通知やガイドライン等の紹介」に示していますのでそちらで入手してください。
○改正省令、通知ならびに関係学会等ガイドラインの関係
改正省令は2020年4月1日に施行しました。また、2019年3月12日付けで厚生労働省医政局長通知「医療法施行規則の一部を改正する省令の施行等について」医政発0312第7号(改正通知)ならびに2019年10月3日付けで厚生労働省医政局地域医療計画課長通知「診療用放射線の安全利用のための指針策定に関するガイドラインについて」医政地発1003第5号(指針策定ガイドライン)を発出しました。また、これに伴って多くの関係学会や団体からガイドライン等が提供されています。ガイドライン等の具体的な名称や掲載アドレスは既掲載原稿を参照してください。これらの改正省令等とガイドライン等の関係を図1に示しました。この両者の関係を理解することが今回の改正の重要なポイントです。
改正通知では、
「放射線診療を受ける者の医療被ばくの線量管理とは、関係学会等の策定したガイドライン等を参考に、被ばく線量の評価及び被ばく線量の最適化を行うものであること。」
としていましたが、
指針策定ガイドラインでは、
「線量管理の具体的な実施方法は、関係学会の策定したガイドラインに則り診断参考レベルを活用して線量を評価し、診療目的や画質等に関しても十分に考慮した上で、最適化を定期的に行うこと。」
として、「診断参考レベル(DRL)」を用いた最適化であることが明確になっています。
また、改正通知と指針策定ガイドラインに共通して重要なことは、関係学会等のガイドラインが改正省令に基づく医療被ばくの適正管理に関する具体的な内容を示すことになることを明確にしていることです。
このように、今回の改正省令は厚生労働省が行うあるいは発出する改正省令・通知と関係学会等ガイドラインがリンクして改正省令が医療機関に求めている内容を示していることが特徴的です。したがって、改正省令の内容を正確に理解するためにはこれらの関係を理解しておくことが重要になります。
○改正省令に基づいて医療機関が対応すべき主な項目と対象医療機器等
改正省令では、比較的線量が高いX線CT、循環器用X線透視診断装置(*1)、核医学(*2)(以下、管理・記録対象医療機器等)においては医療被ばく線量の管理と記録が義務付けられました。
*1:循環器用X線透視診断装置とは、
・移動型デジタル式循環器用X線透視診断装置
・移動型アナログ式循環器用X線透視診断装置
・据置型デジタル式循環器用X線透視診断装置
・据置型アナログ式循環器用X線透視診断装置
のことを言います。
これらの循環器用X線診断透視装置は、主に血管造影やInterventional Radiology (IVR)に用いる装置です。近年、放射線診療の利用が拡大しており、その代表的なものが患者の救命等を行うIVRです。
*2:核医学とは、
・診療用放射性同位元素
・陽電子断層撮影診療用放射性同位元素
のことを言います。
核医学は主に放射性医薬品である放射性同位元素を患者に投与し臓器の機能や病態を知ることができる検査法です。
しかし、管理・記録対象医療機器等以外のX線装置等についても同様に医療被ばく線量の管理と記録を行うことが“望ましい”とされています。
X線CTと循環器用X線透視診断装置については装置に線量の表示機能がなければ医療被ばく線量の管理と記録の対象医療機器等から除外されています。なお、核医学についてはこの除外規定の対象ではないと考えられています。
2021.03.20