職業被ばく

個人線量計の着用率を100%にしよう!

眼の水晶体の新等価線量限度を含む改正放射線障害電離則(以下、電離則)が公布され、2021年4月1日に施行しました。

わが国における旧法の水晶体の等価線量限度は150mSv/年であり、1年平均で約7分の1にまで引き下げられました。

水晶体の等価線量限度の引き下げ

150 mSv/年 ⇒ 100 mSv/5年かつ50 mSv/年

ただし、施行後2年間は特殊な事情の医師に限っては50 mSv/年とする経過措置が盛り込まれています。
*経過措置についてはこちらの記事を参照してください。

そのため、これまでよりも積極的に従事者の職業被ばくを低減する必要があります。また、今回の法改正の過程で、医師を中心に職業被ばく線量を測定するための個人線量計の着用率が低いことが明らかになりました。個人線量計の着用率が高まれば測定された被ばく線量は高くなります。つまり、個人線量計の着用率を100%にすることと職業被ばく線量(特に水晶体)の低減という相反する2つのことを短期間に達成しなければならなくなりました。

そこで、今回は個人線量計の着用率を100%にする方策についてアドバイスしたいと思います。

病院として管理体制の構築

2021年2月14日に掲載した記事で改正電離則に対応するための第一段として、下記に示した病院として管理体制の構築を提案しています。詳細は記事を確認してください。

  • 病院全体としての職業被ばく管理組織(委員会)を立ち上げる。
  • 職員全員に病院全体として職業被ばくの適正管理に向けて臨むことを宣言する。
  • 現在の職業被ばく管理状況を調査、把握する。

これらの3つの活動を行うことで病院全体として職業被ばくを適正に管理し線量の低減に努めることを共有することができます。

医師を中心に職業被ばく線量を測定するための個人線量計の着用率が低いのは、血管造影を実施している循環器内科医や脳神経外科医、X線透視装置を用いた検査を多く実施している消化器内科医・外科医や整形外科医などです。これらの医師は患者の検査や治療のため自ら放射線に被ばくしながら医療行為であるIVR等の放射線診療を実施しています。これらの医師の方々に職業被ばくを低減することは医師自らと介助にあたっている看護師等の医療従事者の健康を守るためであることを理解してもらい自ら率先して取り組んでいただくように促すことが肝要と考えています。

法的な義務だからということで強制的に個人線量計を着用させることも可能かもしれませんが、病院や放射線管理者と医師などの放射線業務従事者の間に信頼関係を築いて線量を低減する方が望ましいと考えています。職業被ばくを低減するためには正しく職業被ばく線量を測定することが重要でありそのためには個人線量計を100%着用することは大前提であると理解していただく必要があります。

タイムアウトで確認

病院内全体の職業被ばく低減と個人線量計着用のコンセンサスを図った上で、的確に個人線量計を着用する体制を構築する必要があります。

意識としては理解していても忙しい業務の中で忘れるということはあり得ます。

そこで、IVRを実施する場合には“タイムアウト”を実施してその際に個人線量計の着用や位置を確認してはいかがでしょうか。

医療現場では手術などの際に医療安全を確保するためにタイムアウトを実施していることと思います。IVRの際にはタイムアウトを実施することを必須とし、その際に個人線量計を着用しているか、不均等被ばく測定に必要な部位に正しく着用しているかを確認するということです。

特に手術室では重要です。

もちろん、個人線量計の着用部位についての研修も実施して放射線業務従事者全員が理解している必要があります。

できればこのタイムアウトの際に、天井吊り型の防護板などの必要な防護機材を正しく使用しているかも確認できるとさらに良いと思います。

経過措置の期間は2年しかありません。

この2年間で眼の水晶体の新等価線量限度などの職業被ばくの線量限度を遵守しつつ個人線量計の着用率を100%にしなければなりません。時間はそれほどありませんのでできることを迅速に実行していきましょう。

2021.04.24

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です