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渡邉ゼミ1期生の卒業研究と大学院研究

群馬パース大学 渡邉ゼミ(研究室)の1期生の卒業研究3編すべてが、下記のとおり学会誌に査読付論文として掲載されました。
1期生なので、学生も大変だったと思いますが、大学で学んだ爪痕を残すことができたのではないかと思います。社会人として飛躍されることを祈念しています。
2期生の2編の論文も現在投稿中です。
現在は4期生の研究テーマの検討をしています。

来春から3期生の1人が大学院(博士前期課程:修士)に進学してくれることになりました。医療従事者の職業被ばく低減に関する研究に取り組んでくれる予定です。
なお、大学院は他の大学から入学することも可能です。

 

「ERCP検査におけるX線診療室内散乱線量の個人線量当量としての測定」

投稿を編集 “研究成果論文「 ERCP検査におけるX線診療室内散乱線量の個人線量当量としての測定」が早期公開されました” ‹ WEB放射線管理室 — WordPress (radi-manage.site)

ERCP検査におけるX線診療室内散乱線量の個人線量当量としての測定.日放技 2021;78(4):364-371.
ja (jst.go.jp)

論文では,線量(分布)を個人線量計で直接測定しています.そのため,関係法令で規定する職業被ばくの線量限度と直接比較することが可能になります.
これによって,線量限度を超えるか否かの事前検討や線量限度を超えないためのIVRの手技回数等を事前に推定することができます.
また,防護眼鏡や水晶体専用個人線量計の着用基準の事前検討も可能です.

患者の救命行為でもあるIVRを施行する医師は,高いレベルの技術が要求され,誰でも代われるわけではありません.そのため,職業被ばくの線量限度を超えることが危惧されています.また,線量限度を超えないようにするためには,IVRの手技回数を抑制しなければならなくなる可能性もあります.それは,つまり,救える患者の命が少なくなるということです.それを回避するためには,防護眼鏡や防護クロスを使用して医師の被ばく線量を低減するが求められます.しかし,これらの防護機材は高価で簡単に購入できるものではありません.また,防護機材の使用はIVR手技の支障になる可能性もあり,術者である医師の理解が必要です.本論文が示した方法で,防護機材の防護効果を事前に評価し,線量限度を超えないために使用することがどの程度求められるのかを推定することができます.また,本法によって,防護機材の有用性を数値化ならびに可視化することができますので,医師の理解も容易で積極的に使用するようになることが期待されます.病院の経営環境は厳しいですが,職員である医師の労働安全を確保することが数値化されて示されれば,購入にも前向きになることに貢献できることを願っています.

「核医学検査室への入退出における患者のスリッパ履き替えの現況に関する調査報告」

投稿を編集 “核医学:患者のスリッパ履き替えに関する調査結果が公開されました” ‹ WEB放射線管理室 — WordPress (radi-manage.site)

核医学検査室への入退出における患者のスリッパ履き替えの現況に関する調査報告.核医学技術 2021;41 : 442-447.

医療の一つである核医学診療は非密封放射性同位元素を使用します。核医学診療を受ける患者は、これまで慣例的に管理区域内で使用するスリッパと管理区域外で使用する履物を区別してきました。つまり、管理区域内に入室する場合と管理区域から退室する場合に履き替えが行われてきました。しかし、皆さん、ご存じのようにわが国は高齢化が進んでおり、患者も同様です。その結果、患者がスリッパ履き替えに伴って転倒する事故が発生しています1)。病院では患者の転倒事故防止は大きな医療安全のテーマの一つにもなっています2)

そのような背景の中、核医学診療に関係の深い、日本核医学会と日本核医学技術学会が連名で、「患者の核医学診療施設の入退出に係る安全確保に関するガイドライン」を公開しました3)

このガイドラインは厚生労働科学研究費補助金研究に基づいています4)

しかし、ガイドライン公開後、核医学診療の現場で、どのように運用されているかは示されていませんでした。

そのため、本学の診療放射線学研究の一環として、群馬県、埼玉県ならびに栃木県において核医学診療を実施している病院を対象にアンケート調査を行いました。

その結果に基づく論文が下記のとおり学会誌に掲載されました。
患者の転倒防止のために、下記のように多くの工夫がなされていることが分かりました。
これらの患者の転倒防止対策のアイディアを報告することで核医学診療の現場で医療事故防止に努めている方々の参考になれば幸いです。

また、本研究にご協力いた群馬県、埼玉県ならびに栃木県において核医学診療を実施している病院の皆様にこの場を借りて感謝申し上げます。

患者転倒防止対策

・介助(技師、看護師、その他の職員、家族)
・入口への椅子やベンチの配置
・スリッパの工夫(種類を増やす、かかとがあり固定できるもの、シューズカバー)

参考文献

1) 宮下信,高橋 良昌, 秋山 真之,他:核医学管理区域内における汚染状況の調査とスリッパ履き替えに関する検討-スリッパによる転倒事故を経験して-.日放技誌.68(1):103-110.2011

2) 一般社団法人 日本医療安全調査機構 医療事故調査・支援センター.医療事故の再発防止に向けた提言第9号「入院中に発生した転倒・転落による頭部外傷に係る死亡事例の分析」.2019年 6 月https://www.medsafe.or.jp/uploads/uploads/files/teigen-09.pdf

3) 日本核医学会,日本核医学技術学会:患者の核医学診療施設の入退出に係る安全確保に関するガイドライン.http://jsnm.org/archives/766/.

4) 平成 22年度厚生労働科学研究費補助金 (地域医療基盤研究開発推進研究事業)「 医療放射線の安全確保と有効利用に関する研究」 (主任研究者 :細野眞)「診療用放射性同位元素使用室への入退出時における患者のスリッパ等の履き替えの必要性に関する検討」 (分担研究者 :山ロー郎)

「X線CTの遮蔽計算法であるJapanese-DLP法を改良するための検証研究」

投稿を編集 “日本のCTの遮蔽計算法(Japanese-DLP法)の改良に向けた検証研究論文が掲載されました” ‹ WEB放射線管理室 — WordPress (radi-manage.site)

X線CTの遮蔽計算法であるJapanese-DLP法を改良するための検証研究.保健物理 2022;57(2):87-92.
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jhps/list/-char/ja

CTは現在の医療に必要不可欠な医療技術です。
しかし、放射線を発生する装置であるため、病院に設置する場合は事前に安全評価を行うことが求められています。
その方法は遮蔽計算と呼ばれています。
特に、CTは一般撮影(通称レントゲン)よりも100倍線量が高いとされ、CT室内の散乱線量も高いことが知られています。
日本のCTの遮蔽計算法は、渡邉ら(*1)が提唱したJapanese-DLP法を基に日本放射線技術学会が、遮蔽計算マニュアル(*2)を作成しています。

今回の論文が、Japanese-DLP法の更なる進歩に貢献できれば幸いです。

*1:H. Watanabe, K. Noto, T. Shohji, Y. Ogawa, and T. Fujibuchi, et.al. A new shielding calculation method for X-ray computed tomography regarding scattered radiation. Radiol. Phys. Technol. 2017;10:213-226.
*2:10. 日本放射線技術学会; X線CT室の漏えい線量計算マニュアル第1版.2019.Available at: https://www.jsrt.or.jp/data/wpcontent/uploads/2019/01/c7c90cd1e18518b827fecb51c7dfdfe4.pdf.

2022.12.18
群馬パース大学
渡邉 浩

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