医療被ばく

DRLの概要と医療被ばく線量管理の考え方

2020年4月1日、医療被ばくの適正管理を求めた改正医療法施行規則(以下、改正省令)が施行しました。これから本格的に勉強を始める方々のために、また、既に対応している方々の復習になるように、診断参考レベル(DRL)と医療被ばく線量の管理の考え方についてできるだけ分かりやすく解説したいと思います。参考文献はインターネット上から入手できるものに限定しましたので是非確認してください。なお、参考文献のアドレス情報は以前の記事に示していますのでそちらで入手してください。

国際放射線防護委員会(ICRP)は放射線防護の基本3原則として、「行為の正当化」、「防護の最適化」と「線量限度の適用」を勧告しています。しかし、医療被ばくにおいては、線量限度を適用することによって必要な診断情報が得られない等、便益よりも害が多くなる恐れがあることから、線量限度を勧告していません。そのため、医療被ばくにおいては行為の正当化と防護の最適化がより重要になります。しかし、同じ部位同じ診断目的であるにも係わらず医療機関によって線量が2桁も異なっていることが危惧されていました。そこでICRPは医療被ばくにおける防護の最適化のツールとしてDRLの策定を推奨しました。そして、2015年に多くの関係学会等団体が協力するかたちとしてはわが国として初めてのDRLをJ-RIMEが作成、公開しました。DRLは放射線診療に関する指標線量の全国調査結果の75%タイルを基本に決定されます。図1に線量に応じた医療被ばく線量の管理を示しました。調査結果の75%タイルを超えている医療機関は比較的高い線量で放射線検査を実施していると考えられます。そのため、DRLを超えた医療機関は直ちに線量を最適化することを検討することが求められます。しかし、DRLを超えていなければ線量の最適化が求められないわけではなく、線量に応じて最適化は常に求められます。また、DRLを超えていたとしても医学的に正当な理由があればDRLを超えることも許容されます。つまり、DRLは線量限度ではなくあくまで参考値であることに十分留意する必要があります。また、体格の良い患者の場合は線量等がDRLを超えることもあります。DRLは個々の患者の線量等との比較に用いるものではなく、数十例の中央値等との比較に用います。このように、DRLの運用にあたってはDRLについて正確に理解することが必要です。詳細はJ-RIMEが作成した以下の参考文献を参照してください。

DRL改訂

2020年7月3日、日本の診断参考レベル(2020年版)が公開されました2)。わが国の最初の診断参考レベルは2015年に公開されていますのでこの改訂版です3)

今回の改訂の主な内容は以下のとおりです。

  • 診断透視の新たな設定
  • 核医学におけるSPECT/CT及びPET/CTのCTの追加
  • 歯科領域の大幅追加
  • IVRのDRL線量の追加

DRL線量の種類もかなり多くなってきました。また、少し複雑になってきた印象があります。参考資料をよく読んでください。私も勉強します。

神奈川県放射線技師会の放射線安全管理委員会では改訂DRLの概要を紹介する原稿をシリーズで会誌である「かながわ放射線だより」に以下のとおり掲載しています(予定を含む)。アクセスできる環境にある方は是非ご覧ください。

  • 一般撮影:2020年11月号
  • CT:2021年1月号
  • 血管造影/IVR:2021年3月号
  • 診断透視:2021年5月号
  • 歯科領域: 2021年7月号

1) 医療被ばく研究情報ネットワーク.「最新の国内実態調査結果に基づく診断参考レベルの設定その2」.http://www.radher.jp/J-RIME/report/DRLkyotusiryou-2.pdf
2) 医療被ばく研究情報ネットワーク(J-RIME).日本の診断参考レベル(2020年版).http://www.radher.jp/J-RIME/report/JapanDRL2020_jp.pdf
3)医療被ばく研究情報ネットワーク.「最新の国内実態調査結果に基づく診断参考レベルの設定」.http://www.radher.jp/J-RIME/report/DRLhoukokusyo.pdf

2021.03.20

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