職業被ばく

個人線量計の着用方法と放射線業務従事者が妊娠した場合の対応

2021年4月3日の記事で比較的線量の高い女性の放射線業務従事者の方が考えておくべきこと」を解説しました。この中で従事者が妊娠した場合の対応について後日解説することにしていました。今日は必ずしも高い線量の従事者限定ではありませんが、個人線量計の着用方法と妊娠した場合の対応について解説したいと思います。

放射線業務に携わっている期間中に妊娠することは当然あります。
この場合、妊娠した放射線業務従事者(以下、従事者)本人だけでなく胎児の安全も確保する必要があります。

従事者には関係法令で職業被ばく限度が設けられています。
妊娠する可能性のある従事者と妊娠した従事者の職業被ばく線量限度の一部を以下に示します。

〇妊娠する可能性のある従事者

・実効線量限度:5 mSv/3月間

〇妊娠した従事者

・内部被ばくによる実効線量限度:1 mSv/妊娠中
・腹部表面の等価線量限度:2 mSv/妊娠中

妊娠した従事者の職業被ばく線量限度は胎児の放射線安全を担保するために設けられています。

図1に妊娠する可能性のある、または妊娠した従事者の個人線量計(放射線測定器)の着用位置を示しました。これはX線透視を伴う放射線検査室に立ち入ることを想定したものです。放射線防護衣を着用して作業しますので不均等被ばく(*)になります。
*放射線防護衣で防護された体幹部と防護されない頭頸部の線量が異なること

妊娠する可能性のある、または妊娠した従事者は腹部表面に個人線量計を着用しなければなりません。

 

IVRに従事した場合の胎児の被ばくは外部被ばくになります。

胎児の外部被ばく状況のシチュエーションを図2に示しました。図1を側面から見た図と考えていただいても良いと思います。

放射線防護衣の内側の腹部表面に個人線量計を着用することで法令で定められた腹部表面の等価線量が測定できます。妊娠期間中のこの線量が2 mSvを超えていなければ胎児の線量も国際放射線防護委員会(ICRP)が勧告する一般公衆の線量限度である1 mSvを超えていないと考えることができます。

 

妊娠した従事者が胎児の被ばく線量を正しく測定する方法と低減する基本的な方法について解説します。

まず、胎児の線量を正しく測定するためには図1に示しましたように個人線量計を正しく着用することが大切です。

次に、胎児の線量を線量限度を担保しつつなおかつ低減するためにはまずは放射線防護衣を着用してください

放射線防護衣には身体の前面からの放射線を防護するエプロンタイプと全周囲からの放射線を防護するタイプがあります。エプロンタイプがだめということではありませんが作業のために放射線が生じる方向に防護していない後面を見せることがないとは限りませんので全周囲タイプを着用することを推奨します。

 

測定結果は毎月放射線管理者から従事者に配布されますので、「腹部」または「女子腹部表面」と書かれた欄の値を確認してください。

「X」や「M」が表示されていれば被ばくしていないか、ほとんど被ばくしていないことを意味しています。

1月間、四半期、年間の欄がありますので実数が表示されているようでしたら線量限度である2 mSvを超えていないかを確認してください。

詳しいことや「X」や「M」に低減したい場合は放射線管理者と相談してください。

放射線管理者は妊娠したことを把握した従事者の線量を迅速に把握してください。線量測定サービス会社の迅速報告システムを利用して一般的な従事者の測定結果よりも早く把握できるようにするのも一考です。そして、腹部表面の等価線量限度を超える恐れがないかを確認してください。

従事者が妊娠した場合に大事なことは放射線管理者が当該従事者と十分にコミュニケーションをとって線量限度を超えないようにすることとともに不安をできるだけ少なくすることです。

妊娠した従事者が不安に思っていることが多いですので、毎月の測定結果を報告書で知らせるのではなく最初の数か月は実際にお会いして報告して安心されるようであれば報告書だけにしても良いかもしれません。

妊娠した従事者に妊娠した場合の線量限度を適用するためには放射線管理者が当該従事者が妊娠したことを把握しなければなりません。

従事者によっては妊娠したことを同僚などに知られたくないと方もいますので、個人情報の扱いを慎重にしながら把握しなければなりません。

そのため日頃から従事者に対して妊娠した場合の対応、線量限度が異なること、胎児の安全のために病院として努めることならびに必要に応じて個人情報の守秘義務を果たすことを啓発しなければなりません。

妊娠中に線量によっては人体に影響がある放射線によって被ばくしなければならない業務に就く従事者が不安を持つことは当然のことです。線量限度を遵守することだけではなく、その気持ちに寄り添う放射線管理が求められています。そのための参考になりましたら幸いです。

2021.04.17

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