職業被ばく

職業被ばく線量に関する個人報告書の見方

2021年4月1日、眼の水晶体の新等価線量限度を含む改正電離則が施行しました。また、職業被ばくを測定するための個人線量計の着用率を高めることが求められています。

これらによって、放射線業務従事者(以下、従事者)自身が自分の線量を正しく把握すること、線量限度を超えるおそれがないかを確認することがこれまでにも増して必要とされます。また、IVRに従事していて個人線量計の着用率が低かった医師等の従事者の方は線量(数値)が上がることが予想されるので心配にもなるかもしれません。

また、従事者が妊娠した場合には胎児の安全を従事者自身が確認できるようにしたいと考えるものと思います。

そこで、職業被ばくの線量測定サービス会社にご協力いただき個人報告書のサンプルをいただきましたので、そのサンプルを使って個人報告書の見方を解説したいと思います。

なお、現在、依頼できる線量測定サービス会社は株式会社千代田テクノルと長瀬ランダウア株式会社(アイウエオ順)の2社のようですので2社のサンプルを使って解説します。

また、法令で測定した線量結果は速やかに当該従事者に配布することが法令で義務づけられています。例示した個人報告書が配布されていない従事者の方は勤務する病院の放射線管理者に確認してください。一方、放射線管理者の方はできるだけ速やかに従事者本人に個人報告書を配布してください。

まず、通常、職業被ばく線量は1か月ごとに個人線量計を配布されていると思います。ですので、配布された最新の月の線量を確認してください。着用した月の個人線量計は回収した後、病院のすべての部署、すべての従事者の個人線量計を集めてから線量測定サービス会社に一括して送付します。そのため、数日から1~2週間送付までにかかります。線量測定サービス会社が測定結果を出し、病院へ結果を報告するまでにも時間を要します。さらに、病院の放射線管理部門が線量の確認を行った後で従事者個々に個人報告書を配布しますので早くても1か月、場合によっては2か月程度は要します。したがって、最新の月の線量といっても1か月から2か月前の線量になります。

最新の月の結果は赤枠の箇所に記載されています。どの月あるいは期間の線量かは個人報告書内に記載されています。

実効線量、水晶体の等価線量などの職業被ばく線量を確認してください。

XやMは被ばくしていないか、ほとんど被ばくしていないことを表しています。

妊娠している従事者の場合は腹部表面の等価線量を確認してください。

IVRに従事している医師等で一次X線(照射野)内に手指を入れることがある場合には皮膚の等価線量も確認してください。

なお、皮膚の等価線量限度は500 mSv/年で従前と同様です。

これを毎月確認していれば四半期や年間の線量がどのくらいかを把握できてるはずです。

もし、初めてであったり以前の線量を覚えていない場合は、黄色の枠の箇所に記載されている四半期と年度ごとの線量を確認してください。

特に、(妊娠可能な)女性の従事者の実効線量限度は四半期(3か月)に5 mSvとなっていますのでよく確認してください。(妊娠可能な)女性の従事者の実効線量限度についての注意事項についてはこの記事を参照してください。

また、実効線量限度と眼の水晶体の新等価線量限度はともに「100 mSv/5年かつ50 mSv/年」(*)となっていますので、線量が多い従事者の方は(定められた)5年間のブロックでの線量も100 mSvを超えていないかも確認が必要です。
*:表記上は同じ数値と単位ですが実効線量と等価線量で異なります。

ただし、IVR等に従事していている特別な医師については必要な措置を講じていれば経過措置が適用できます。詳細は関連記事でご確認ください。

なお、詳細な解説は線量測定サービス会社でも行っていますのでホームページ等でご確認ください。

個人報告書には測定値と算定値という表記があると思います。この解説をまた掲載するようにします。

2021.05.01

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  1. […] 2021年5月1日に掲載した記事で個人報告書に記載された職業被ばく線量の見方を紹介しました。なお、法令で放射線業務従事者(以下、従事者)に個人報告書を配布することが法令で義務付けられています。 […]

  2. […] 2021年5月1日に掲載した記事で個人報告書に記載された職業被ばく線量の見方を紹介しました。また、2021年5月15日に掲載した記事で個人報告書あるいは病院への正式な報告書に記載された測定値から個人線量計の不適切な着用方法の見分け方と対応方法を解説しています。なお、法令で放射線業務従事者(以下、従事者)に個人報告書を配布することが法令で義務付けられています。 […]

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職業被ばく線量の少し深い確認方法と防護眼鏡・水晶体専用個人線量計の重要性 - WEB放射線管理室 へ返信する コメントをキャンセル

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